| 1.3つの治療方法 | 2.当院の治療方針 | 3.注意事項 |

3つの治療法
薬物治療

 現在日本で最も多く用いられている治療方法は薬物療法です。
 抗甲状腺薬として、メルカゾール(あるいはプロパジール)を内服します。
 最初は一日3〜6錠の内服から始めて、甲状腺ホルモン値の低下を見ながら徐々に内服量を減量していきます。また治療開始時には交感神経亢進症状(動悸、発汗、手のふるえなど)に対して交感神経遮断薬のインデラルを短期間内服します。
 約2年間内服後、甲状腺受容体抗体(TRAb)や甲状腺刺激抗体(TSAb)が正常化すれば内服薬を中止し、さらにその後2年間再燃がなければ寛解と診断します。
内服薬のみで加療可能であること
寛解までに約4年間と時間がかかること
内服薬の減量時に再燃が多く、寛解率は3分の1程度と低いこと
寛解しない場合には内服薬の継続が必要なこと
採血などのため長期間頻回の受診が必要であり、治療費が高くなること
皮疹、肝障害、無顆粒球症(*)などの薬物障害が約10%あること

(*)無顆粒球症
内服後2〜8週後を中心に約300分の1の確率で出現する副作用であり、白血球の中の好中球がほぼ消失します。
症状は突然の40度近い発熱と強い咽頭痛です。
これらの症状が出現した場合には、まず内服薬を中止するのが第一であり、すぐに白血球分画の測定により確定診断を行う必要があります。
治療は無菌室への入院により感染症を防止して、好中球の回復を待ちます。おおよそ2週間で退院可能となります。
発生率は約300分の1と低いのですが、重篤な副作用であり常に意識しておく必要があります。
アイソトープ治療

 最近増加してきた治療方法であり、現在年間約2000人がこの治療を受けています。
 具体的にはヨードの放射性同位体(I131)を一度内服するのみです。そのI131が甲状腺に集まってβ線を出し、甲状腺細胞を破壊してホルモン分泌を抑制します。
 まずI131内服1週間前から抗甲状腺薬を中止し、ヨードの摂取制限を行います。
 I131内服の約3ヶ月後には甲状腺ホルモンの分泌が低下し始め、低下の程度に応じて甲状腺ホルモン製剤(チラーヂンS)の内服補充を行います。
 約6ヶ月後に甲状腺ホルモン製剤の内服量が安定すれば、その後継続内服することになります。
 甲状腺ホルモン製剤は副作用がなく3ヶ月処方が可能であり、採血も年に一度定期的に行えば十分です。
費用が安いこと
副作用がほとんどないこと(発癌例は今までに報告されていません)
1回のアイソトープ治療で不足しても繰り返して施行できること
少なくとも最初の6ヶ月程度は大学病院への通院加療が必要なこと
被爆後4ヶ月間(できれば1年間)は避妊が必要なこと
甲状腺ホルモン製剤の内服を継続する必要があること

(*)アイソトープ治療を希望される場合には、詳しいパンフレットをお渡ししております。
手術

 現在はほとんど行われていないのですが、時に甲状腺が非常に腫大して呼吸困難感や頚部運動などに支障がある場合には手術の選択を行うこともあります。
短期間での治癒が可能であること
亜全摘術により術後の内服薬が不要となる可能性があること
一週間程度の入院が必要なこと
手術に伴うリスク(出血や神経損傷、麻酔障害など)が避けられないこと
頚部前面に約10cmの手術痕が残ること
手術後であっても再燃する可能が残り、再手術はできないこと
当院の治療方針
 今までの経験より、薬物治療を選択される方が非常に多く、薬の副作用を十分に説明し、ご理解いただいた上で薬物治療を中心に行っています。
 抗甲状腺薬単独でのコントロールが困難であっても、甲状腺ホルモン製剤との併用療法を用いることにより、ほとんど場合は安定させることが可能です。

 一方、アイソトープ治療にも良い面があり、私の前勤務先の東京女子医科大学病院では、核医学部放射線科にて専門家の先生方が多数の症例を扱われ、安心して治療ができますので、今までもよくご紹介させて頂いております。アイソトープ治療を選択される場合であっても甲状腺ホルモン値が低いほど安全に行えるため、まずは薬物治療で甲状腺ホルモン値を正常化させることをおすすめしています。

 手術は必要な場合以外は基本的におすすめしていません。
注意事項
食事制限について

 甲状腺はヨード(*)を原材料にして甲状腺ホルモンを生成しており、抗甲状腺薬は甲状腺へのヨードの取り込みを阻害する作用などにより甲状腺機能を抑制しています。そのため、抗甲状腺薬の効果を高める目的でヨードの摂取制限をする必要があります。

(*)ヨード
海産物に多く含まれる元素(I)です。特に昆布に最も多く含まれ、わかめ、ひじきなどの海草類、鰹だし・いりこだしなどのだし汁、貝類、魚類に多く含まれます。


 また、バセドウ病を治療に際して、甲状腺機能の正常化に伴って急速に体重が増加するため、食事量の制限が大変重要になります。これは、甲状腺ホルモン分泌が低下することにより、体の代謝が低下し、食べた分だけ体重が増加するようになるためです。時に1ヶ月に10kgも体重が増える場合もありますので、治療前に目標体重を定めることが大切です。
妊娠中あるいは妊娠を予定されている方へ

 内服薬やアイソトープ治療の副作用、甲状腺ホルモン値の上昇や低下による胎児への影響を考慮する必要があります。
 具体的には妊娠前に内服薬を副作用の少ないものに変更したり、時には手術の選択を検討したり、アイソトープ治療直後の妊娠を避ける必要があったりします。また、甲状腺ホルモン値の上昇は流産の危険を高める一方で、その低下は胎児へのホルモン補給が不足することになります。さらに、妊娠バセドウ病、出産後のバセドウ病増悪や、、新生児バセドウ病などの観察のために婦人科や小児科との連携が必要となることもあります。
 そのため、患者さん一人一人の病態や治療状況に応じて、各人に最も適した治療方法を検討する必要があります。できましたら妊娠予定の際に一度ご相談させて頂きたいと思います。
 また、ご結婚を予定されている方も同様に事前相談されることをおすすめ致します。



Copyright(c) 2007 kato.clinic All Rights Reserved.